7期運営のS.Yです。
私たちは今年、「子連れからあたたかい社会へ」という思いを込めて子連れの日を制定しました。
では、あたたかい社会ってどんな社会?
考えるためのひとつのきっかけとして、私が2年間暮らしたある国での経験をお話ししたいと思います。
日本のジェンダーギャップ指数は120位
日本のジェンダーギャップ指数は120位(2021年、156カ国中)。
ではジェンダーギャップ指数36位の国と聞くと、どんな国を思い浮かべるだろうか?
これはGDPも人口も日本の1/10にも満たないアジアの小さな国。
子供が1歳2ヶ月になった日、私はここで働き、そして子育てするために、初めてこの国に降り立った。
赴任時、途中の空港で。娘はまだまだ赤ちゃんでした
子どもと一緒の生活
友人とともにレストランに行ったときのこと。
子供は自分がお腹いっぱいになれば、私の食事などお構いなく、椅子から降りて歩き回ろうとする、のはいつものこと。
おもちゃや手遊びでごまかしながら必死にゴハンを食べていると、店員さんが近づいてきて子供に手を差し出した。おいで、と。
店の奥に連れていくと、これまでボーッと携帯を触っていた店員さん達が集まってきて、抱っこしたり話しかけたり。すごく楽しそうに相手をしてくれた。
現地のレストランにて。店員さんの抱っこ
オープンキッチンのカフェ
自分で注文したドリンクを運んでいます
これは一度二度ではなく、レストランだけでなくマッサージ屋さんや他のお店でも、同じように店員さんが子どもの相手をしてくれる。
お店の奥に店員さんの子供がいて、一緒に遊んでいるときもあった。
私が機織体験をしている最中、奥のスタッフルームで遊んでいた娘はそのまま寝てしまった
この国では仕事相手や同僚との飲み会が頻繁に開かれる。
そこには男女関係なくほぼ全てのメンバーが参加している。
子どもは?と聞くと、親などの家族が面倒を見てくれているそうだ。
この国では、親と同居していたり、進学のために田舎から出てきた親戚の子を住まわせたりすることがよくあるようだ。
また首都では、そういった家族が家事や子守りを手伝っていたり、または一般的な家庭でもお手伝いさんを雇って家事を任せているケースもあるようだ。
こういった家庭の背景があるからか、仕事上のコミュニケーションも滑らかに見えた。
性別、立ち位置に関係なく、分からない、時間がない、できない、とはっきりと言い、頼ったり助けたりを自然にしている、ように私には見えた。
子どものいる職場
ある休日のこと。
首都から1時間ほどの郊外へ遊びに行ったら、小さな小学校があったので覗いてみた。
その教室の真ん中には何やら大きなカゴが。
よく見ると、カゴは天井から吊るされていて中には赤ちゃんがいるようだ。
お利口に座っている生徒たちは、先生に当てられたら前に出て、問題を解いて、終わったらカゴをひと揺らしして席に戻る。
この風景がすごく自然で、確かにここに赤ちゃんが居てはいけない理由はなんだろう、とさえ思ってしまった。
教室の真ん中に赤ちゃんの眠るカゴが吊るされている
私の職場の現地スタッフは、男性が子どもの送り迎えをしているケースがほとんどで、
多くの男性スタッフが子どもの通学時間に合わせて家を出るので始業時間の半時間以上も早く、職場に来て、オフィスでゆったり朝食を取っていた。
夕方も終業時間と同時に、皆すぐにオフィスを出て、子どもの学校に直行する。
女性は真っ直ぐ家に帰って夕飯の準備などをするようだ。
子どもが学校の事情などで早く帰ってくるときには、時間休で迎えに行き、その後は終業まで、オフィスの受付で待たせている姿もよく目にした。
スタッフはもちろん来客も、子どもと和やかに雑談していた。
私は母1人子1人で生活していたので、夜の飲み会はもちろん残業時なども、子どもを連れることが多かった。
外国人の核家族という特殊条件下だからかもしれないけれど、皆あたたかく迎え入れ、子どもを抱いてくれた。
私が体調を崩したときには、土曜の夜にも関わらずお手伝いさんがすぐに駆けつけてくれて、子供の世話をしてくれた。
「子連れにあたたかい社会」って何だろう?
子どもを抱いていると、なにかと不便が多いが、
ここでは、買い物をしたらレジの人が車まで運んでくれるし、
レストランに入れば店員さんが椅子を引いてくれるし、
駐車場のガードマンは子供を車に乗せてくれるし、
階段が急なときは二階まで子供を上げてくれる。
本当に小さなことだけど、それが当たり前にしてもらえると、お出かけのハードルがガクンと低くなる。
ドライバーが靴を履かせてくれる
マンションの駐車場のガードマン。毎朝、玄関から車まで抱っこしてくれる
私に親切にしてくれた人達は、何か大きな想いがあってこういった行動をしたのではなく、
単に子供がかわいくて大好きだからちょっと触りたいだけ、という印象で、そのさりげない感じが私の心をあたたかくしてくれた。
この国で女性活躍が進んでいる背景として、
短い育休制度や伝統的な習慣なども関係していると考えられ、全てを真似した方が良いとは決して思っていない。
けれども、自分の心があたたくなった経験は大切に留めておきたいなと思っているのです。
【ライタープロフィール】
S.Y
子連れMBA3,7期運営メンバー、ライフシフトチャレンジ第一期生
4歳と0歳、2児のの母。35歳。新卒で国際協力の道に入り第一子出産から復帰のタイミングで開発途上国へ母子で赴任。
趣味は旅行、町歩き、食べること。
第一子育休時に子連れMBAに出会う。
海外赴任や出張の多い職場で、ワークとライフのバランスに悩みつつ、自分らしい生き方やキャリアを模索中。