子連れMBAでは、「子連れの日(5月20日)」制定にあたり、「子連れ×仕事」のための取り組みに挑戦されている企業・団体さまへのインタビュー企画を実施しています。
6回目となる今回は、乳幼児向け玩具メーカーのピープル株式会社の新事業開発部、真下 美奈子さんに、子連れMBA代表赤坂と子連れMBA運営の田中がお話を伺いました。
ikukyu innovation’sを始めた思い
−–ピープルでは育休の方を対象に商品企画プロジェクト「ikukyu innovation’s」をされていますよね。具体的にどのような活動なのでしょうか?
真下 美奈子さん(以下、真下) 商品開発プロセスの最初の部分である、商品アイデア提案を、一般の育休中ママ・パパと一緒に実施しています。ピープルのビジョンが“一番身近で「私達(=子育て生活者)のことを本当にわかってくれている」商品・サービスを最前線で世の中に提供し続ける”なので、子育て生活者そのものである皆さんのアイデアを生かして頂いています。40名ほどが参加し、チーム分かれて商品アイデアの企画・試作・プレゼン体験を6か月かけて行います。
−–どのような経緯で始まったのでしょうか?
真下 これは私の育休中の経験から始めた企画なんです。私は新卒でピープルに入社してからずっと商品開発を担当しています。育休中も商品開発者の目線で子育てをできたので楽しかったです。この視点で考えると育児に関する事柄も俯瞰して考えたり、トライ&エラーを繰り返したりできるので。同じ経験を他のママ・パパにもしてほしいなと思いました。商品企画だけではなく人生やキャリアにも活きる考え方なので。
ちょうど新社長になるタイミングで、新しい挑戦を歓迎するメッセージが出されていたので、「ikukyu innovation’s」という形で提案し実現しました。
−–商品企画プロジェクトなのに、キャリア講座がありますよね。それも商品企画の考え方がキャリア形成に生きるというお考えからということでしょうか?
真下 おっしゃる通りです!でもそれをピープルのイチ社員から一般の育休中の方に伝えても、「ピープルにいるならその商品企画的目線はキャリアに生きるかもしれないけど、他の仕事では生きないだろう」と思われがちなので、キャリアコンサルタントをお呼びして講座を担当していただいており、卒業する参加者さんからも好評を得ています。
−–ikukyu innovation’sを運営される中で、意識されていることはありますか?
真下 課題解決の面白さを感じていただくことですね。商品はユーザーの課題を解決するためにありますから。ピープルでそれを経験していただければ、商品化する可能性が高くなるというのもありますが、日常や仕事でも課題解決を楽しむ視点や思考は役に立つと思います。ちなみに、ikukyu innovation’sでは、最終的に企画した商品を参加者の方から社長にプレゼンしていただくのですが、中には商品化が決定するものもあります。
課題解決の思考法は、単に商品企画の手法を学ぶだけでは身に付かないので、実践を通して課題解決を体験いただくようなプログラムにしています。
育休中に社会からの疎外感を感じる方もいらっしゃると思いますが、むしろ育休中はいろいろ挑戦でき視野も広げることができる期間であり、ご自身をトランスフォームする機会だと前向きに捉えていただきたいです。参加頂いた方と、また復帰後にお仕事などでまたつながって楽しいことが企画できたら最高ですね。
−–子連れMBAも学びと実践の両輪のフォーカスしているので、とても共感します。
真下 ありがとうございます、嬉しいです。
ikukyu innovation’sの様子
制度がない?ピープルの働き方
−–ピープルさんでは「子連れ」×「仕事」はどのように捉えていますか?
真下 ピープルにとって、出産して復帰してくれる人はありがたい存在なんです。私たちの仕事は子ども自身がモニターになったり、商品を買ってくれてようやくビジネスが回るものなので。産休に入る社員も、商品のモニターをしたり子育て中に思ったことをフィードバックしたりすることが役目だと思っていると思います。そのため、今はリモート勤務で難しいですが、以前は子連れ出勤はよくあり特に0歳児が会社に来てくれたら引っ張りだこでしたね(笑)。
−–世の働くお母さんたちみんなが羨ましがるお話ですね!では、子育て中の社員に向けた支援制度はありますか?
真下 特別、子育て中の社員だけに向けた制度はありません。ピープルにとって子連れは個性の一つなんです。子連れであるかどうかに関わらず、誰もが柔軟な働き方ができます。子どもが小学校に上がるまでは時間給を選ぶ社員がいるように、介護のために時短を選ぶ社員もいます。自分の働きたいように時間や場所を選んで働けます。少人数の会社だから、ということもありますが、制度がないからこそ一人一人の個性に合わせた働き方ができる気がしています。
−–子連れであることを意識せずとも働きやすい、理想的な会社ですね。どうしてそのような風土が生まれたのでしょうか?
真下 創業エピソードが関係しているかもしれません。実はピープルは当時の親会社のリストラ要員からスタートしています。当時の時代背景から、倒産するなら真っ先に解雇対象に挙がるのが、若い女性社員だったのですが、その素人の女性たちを集めて創業者が何ができるかを考えて、おもちゃやがスタートしました。創業者の息子(今の社長)がちょうどおもちゃのモニターになって、まさに創業者の家庭の観察・実験がもとになって創業時のヒット商品が生まれてきました。リストラ要員だった素人集団でも知恵やいろんな人の協力でヒット商品がつくれたからこそ、今のピープルがあるのです。素人でも日常の観察や実験が価値になる、家族も含め一人一人の経験が価値になる、という「人=ピープル」を大事にする創業者の想いが、今も根付いているんだと思います。
子連れ出勤の様子
※現状は感染症対策のため、リモートワークを実施しており、子連れ出勤は実施していません。
企業のビジョンである『一番身近で「私たち(=子育て生活者)のことを本当にわかってくれている」商品・サービスを最前線で世の中に提供し続ける』をikukyu innovation’sや組織風土からも感じられました。
現在ikukyu innovation’s2期を募集中だそうです!ご興味をお持ちの方は以下のサイトをご覧ください。
https://www.people-kk.co.jp/ikukyu_innovation/
ピープルさんのような「子連れ」×「仕事」の価値観の会社が増えれば、より多くのバックグラウンドの方が働きやすい世の中になりそうです。そんな世の中に少しでも近づけるよう、子連れMBAでも「子連れの日」プロジェクトはずっと続けていく予定です。次回インタビューもぜひお楽しみに。
<プロフィール>
真下 美奈子(ましも みなこ)
5歳~中3まで男児2人女児2人の母。ピープル株式会社で4回産休・育休取得、復帰のたびに新しい企画チームに所属し、ピープルの商品カテゴリー全ての企画を経験。現在は、「育休イノベーションズ」部長として、一般のパパママとの共創プロジェクトを進行中。
赤坂 美保(あかさか みほ)
10歳と6歳男子の母。子連れMBA主宰。1人目妊娠中&産後にMBAに通い、2人目育休中の2015年に「子連れMBA」を立ち上げる。15年以上の企業勤務を卒業し、子育て関連事業を複数立ち上げ中。子連れMBAを運営する(一社)ぷちでガチ代表理事も務める。
<ライター>
田中 京子(たなか きょうこ)
0歳5か月女子の母。子連れMBA運営。新卒でコンサルティング会社に入社し、業務改革プロジェクトや新規事業立案プロジェクトを担当。職場環境の改善への興味から、結婚の転居とともに小売業の人事職に転職し、採用・評価・労務改善に従事。