子連れMBAを運営する(一社)ぷちでガチは、「子連れの日 (5月20日)」を制定いたしました。
制定記念として、5月20日~6月20日を「子連れの日制定記念month」と題し、さまざまなイベントや取り組みを行っています。
その第一弾として、なつみっくすさん(一般社団法人 母親アップデート 代表理事)、奥野 明子さん(甲南大学 経営学部 教授)をゲストにお迎えし、赤坂 美保(株式会社たおやかカンパニー 代表取締役/一般社団法人 ぷちでガチ 代表理事)がモデレータを務め、トークイベントを実施いたしました。
子ども連れだけでなく、ご高齢の方や障がいのある方などが遠慮することなく過ごせるようなあたたかい社会を創りたい!
私たちが「子連れの日」に込めた思いと、そしてワーママ、ワーパパへの応援がたくさん詰まっています!
ぜひ最後までお読みください!!
はじめに
なつみっくすさん(以下、なつみ)
2019年1月 「母親を、もっとおもしろく。」をビジョンに母親アップデートコミュニティを立ち上げました。「アップデート=毎日ちょっとした変化をやってみよう!」を目標に様々な部活(読書、マインドフルネス、政治などの学びあい)を実施しており、現在220名程度が全国から参加しています。母親アップデートコミュニティは副業でして、本職はIT企業の社員であり、社内でも女性社員コミュニティ活動を自主運営しています。
奥野明子さん(以下、明子)
甲南大学経営学部の教授であり、高校生、中学生の2人の子どもの母親です。人事評価、特に育休からの復職者の人事評価を専門としています。育休復帰者は職場に迷惑をかけているという後ろめたさからか、評価に不満があっても「どうして?」と言えないことが多いのではないでしょうか。それを深堀りすると、復職者に限らず働く女性全般への評価バイアスの問題にも行きつくと考えています。これを探ることを自分の使命として研究をしています。
社会を変える!
なつみ
「自分はここにいていいのだろうか?」「仕事にも家庭にも迷惑をかけているのでは?」という思いや、無意識のバイアスで委縮してしまっている母親が多いと、コミュニティ活動をしていて気が付きました。そこで「一人ひとりが個性に気づいて自分を解放する」を目的に社内外で活動しています。
明子
大企業に入ると組織のパーツになってしまって、自分の仕事の成果が見えづらくなってしまうことが多いと思います。ただ大企業の良い部分は、出世したときにできる仕事が大きいという点のはず。だから大企業にお勤めの方々は、日々の仕事はつまらないと感じることがあるかもしれないけれど、上を目指してほしいと思っています。日々の仕事がつまらないのは、組織や制度、仕組みにひずみがあるからではないでしょうか。それを変えるにはやはり、上のポジションに就くことが必要です。そのためには普段からひずみに気がついて、どうやって変えていこうか、どうやって変えられる力を身につけようか、と考えていると、日々の仕事が少し楽しくなるかもしれません。会社が変わらなければ社会は変わらない。外から動かすことも大切だけど、中から変えていくことにもチャレンジしてほしいと思っています。
なつみ
色々な方が組織や制度、仕組みにモヤモヤを抱えていることは確かだと思っています。ただ自分がキャリアアップを目指すかといえば私はそういう気持ちがありませんでした。女性はそんな方が多いのではないでしょうか?社内にロールモデルがいない、組織制度や仕組みのひずみが大きいことが原因と考えています。では、だれかが第一歩を踏み出す必要があるけれど、一人だと難しい。だから、まずは社内コミュニティを作って当事者同士が集まってボトムアップで意見しつつ、上のクラスの人たちも巻き込んでトップダウンでも組織へ意見を反映してもらう、という活動を始めました。ここから変化を起こしたいと思っています。
赤坂 美保代表(以下、美保)
子連れMBAも組織外のコミュニティであって、もともとは何か成し遂げたいといった強い思いで始めたものではないのです。ただ集まるとみんな同じ問題意識を持っていて「子連れから社会を変えよう!」という大きな思いになりました。一人では難しいけどみんなで集まれば何かできる!と思っています。
なつみ
私も「社会を変えよう!」みたいな大きな気持ちがあってコミュニティを始めたのではないです。「バイアスや思い込みで自分の可能性に蓋をしてしまっているのではないか、結果としてジェンダーギャップに繋がっているのではないか」ということを自身の目の前の課題として感じていました。こう思っているのは私だけじゃない、ということに気が付いたときに、だったら母親同士が集まって、自分自身が幸せになるようアップデートしていき、それぞれの半径5mの人たちが幸せになればきっと社会も変わるはず、と思って、コミュニティ活動を始めました。
「夢中!」に勝るものはなし
なつみ
会社の外に出て多様な人と交わることで、見える世界が変わりました。そして自分の会社に持ち帰ったときに自分の視点が変わったことに気づき、世界が広がりました。それがコミュニティ活動の楽しいところです。
明子
私は研究者なので、この分野はまだ研究されていないのだ、という分野を見つけたときに楽しいと感じます。私の研究分野である女性の人事評価については、海外の組織心理学領域では膨大な研究成果があるけれど日本では紹介されていない、つまり日本で関心を持たれていない分野なのです。最近、パーソル総合研究所が、他の条件を同一にし名前のみ女性名と男性にした場合、採用においてどのような差が出るかについて調査(※下記に掲載)を実施していました。しかし、これと同じような実験はアメリカでは1968年に実施され、後にGoldberg実験といって有名な実験となりました。にもかかわらず、日本ではほとんど知られていません。それを発見したときに怒り、悲しい…という気持ちとともに、私自身が研究者として反省もしました。そして、「これこそ、やらなきゃ!」と使命感が出てきました。
※マネジメントにおけるアンコンシャス・バイアス測定調査(パーソル総合研究所 スライド25.26参照)
美保
かわいい子供との時間を割いてでもやりたいほど夢中になれるって、ありがたいことですよね。若い時は目の前の仕事に夢中でしたが、子供を産んでから本当に自分のやりたいことなのか?と考えるようになり、楽しいことに集中するようになりました。
「時間がない!」優先順位付けはすばらしいスキル
なつみ
子供ができると純粋にやることが増えますよね。イヤでも優先順位をつけて何を大切としているか、考えなくてはいけなくなりました。時間の優先順位、また自分が何に喜びを感じるのだろうと、考えるようになりました。
明子
時間の優先順位付けはすごく大事です。育児をすると生産性が下がると、これまで一般的に言われてきましたが、最近の研究では育児をすると生産性が上がるという議論も出てきています。理由は仕事の優先順位を付けられるようになるから。私たち母親は秒単位で優先順位を考えていると思うけど、子供がいないとそこまで厳しくはやらないですよね。その経験は仕事のパフォーマンスを劇的に上げているはずです。
美保
残業している方が高収入という状況に違和感があったのですが、育児をして効率が上がればパフォーマンスも上がることが実証されるといいですね。
子育ては人生を豊かにする
明子
経営学のフィールドで男性育休について話をしていると、仕事にどんなメリットがあるかという議論に集中しがちです。けれど、調査の中で一人の男性が答えた言葉、「育休で人生が豊かになった」が忘れません。それを聞いて、そうだよね、まず仕事の前に大切なことがあるよね、としみじみ感動してしまって・・・。
美保
確かに最近、仕事・ビジネスって古臭くない?と思うようになってきました。本当は人生を豊かにするための仕事だったはずなのに、最近は人生の目的が仕事になってしまっているのではないでしょうか。仕事も人生を豊かにする、一つの要素ですよね。
子連れの日は、子連れでどこでもいきたい!ということを強く主張したいのではなく、みんな、例えば年をとったら足が悪くなったりすると思うし、そういった人たちも気兼ねなく出かけやすいように、みんなが気兼ねなく生きられる社会へと変えていきたいなと思っています。
今、子育て中の皆さんへ
明子
子育てって、その最中は何も見えなくなるくらい、本当に大変。でも時間が経てば子育ては必ず終わります。今は目の前のことが本当に大変ですが、人生もキャリアももっと長いスパンで考えたら、子育て期間中をなんとか切り抜けられるはずです。ぜひ前向きに進んでください。
なつみ
子育て中は、私も一人だと辛いと思うことが多かったです。皆さんも、ほかの仲間と繋がって、孤独じゃない、自分自身を大切に、がんばりすぎず、少しでも社会の前進につながるよう一緒に活動していけたらと思っています。
運営より
子育てと仕事が目の前の最大課題であるワーキングマザーですが、同じ課題意識を持つ仲間と少しずつ繋がり、周りに働きかけていく、そして会社、社会を変えていく、という輪の広がりに気付かされる内容でした。
子連れの日制定記念montはこれからも続きます。特設サイトから更新情報を御覧くださいね!
5月20日は「子連れの日」